保育の仕事はやりがいがある一方で、体力勝負の側面もあります。特に早番・遅番が入り混じるシフト制勤務では、生活リズムが乱れがちで「疲れが取れない…」と感じる保育士さんも多いのではないでしょうか。
子ども達の笑顔に癒やされつつも、 不規則な勤務による心身の疲労 は放っておくと蓄積し、健康に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、シフト勤務の特徴とそれが身体・メンタルに与える影響を整理し、現役保育士さんが実践できる体調管理の方法をご紹介します。睡眠・食事・運動・休養といった基本のケアから、職場での工夫、妊娠を見据えた健康管理や葉酸サプリの活用まで、ポイントをわかりやすく解説します。
忙しい毎日の中でも上手に自分の体と付き合い、長くイキイキと保育の仕事を続けていくヒントにしてみてください。
保育士シフト勤務の特徴と心身への影響
昼夜にわたるシフト勤務は保育士の心身に少なからず負担をかけます。
早朝からの早番勤務の日もあれば、夜遅くに子どもを送り出す遅番の日もあり、毎日同じ時間に働けるわけではありません。勤務時間がくるくる変わることで体内時計が狂いやすく、生活リズムは不規則になりがちです。
その結果、「早番の前日は緊張してなかなか眠れない」「遅番明けは疲れて朝起きるのが辛い」といった 睡眠不足 に陥りやすくなります。
十分に寝られない日々が続けば、慢性的な疲労感が抜けず、いつも体がだる重い状態になってしまうでしょう。
睡眠不足はクマや肌荒れの原因にもなり、お肌の調子が下がると気分まで落ち込むものです。
また、 不規則な勤務は食生活の乱れ も招きがちです。早番の日は忙しくて朝食を抜いてしまったり、遅番では夕食が深夜になったりすることもあるでしょう。
保育の合間の休憩時間も十分に確保しにくく、慌ただしくお昼ご飯をかき込む日も多いかもしれません。
時間が無いとついコンビニ弁当や菓子パンなどで簡単に済ませてしまい、栄養バランスが偏ることもあります。
不規則な食事と栄養不足が続くと、体調を崩しやすくなるだけでなく、肌荒れや疲れやすさ、集中力の低下、イライラ感の増加にもつながります。
シフト勤務はプライベートの予定も立てにくく、生活リズムの違いから 精神的なストレス を感じる一因にもなります。友人や家族との時間が合わず誘いを断ることが増えたり、休みの日は疲れ切って何もできずに終わってしまったり…。そうした状況が重なると孤独感を覚えたり、「自分だけが大変なのでは」と気持ちが沈むこともあるでしょう。
加えて保育士の仕事自体、常に子どもに注意を払い気を張る緊張感の連続です。抱っこや中腰の姿勢など 身体的負担 も大きく、腰痛や肩こりに悩む人も少なくありません。
滋賀医科大学の社会医学フィールド実習による調査では、保育士は痛みよりも「体がだるい」という疲労感を訴える人の方が多いという報告もあります。だるさを放置して疲労が蓄積すると、いずれ慢性的な腰痛などの痛みに発展しかねません。
このようにシフト制の保育現場では、睡眠不足・栄養不足からくる慢性疲労や体調不良、ストレスの蓄積といった 心身への悪影響 が生じやすいのです。「保育士だから仕方ない」と無理を重ねてしまう方もいますが、まずは現状で自分の体に何が起きているかを自覚し、ケアしていくことが大切です。
保育士によくある疲労や体調不良の例
シフト勤務の中で保育士さんによく見られる 疲労や体調不良のサイン を挙げてみましょう。当てはまるものがないか、セルフチェックしてみてください。
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常に疲れている感じがする: 「しっかり休んだはずなのに翌朝も体が重だるい」「休日も寝て過ごすしかない」など、慢性的な疲労感が抜けない状態です。朝起きるのが辛く、出勤前からヘトヘト…という場合は要注意です。
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睡眠トラブル: シフトの関係で就寝・起床時刻がバラバラになると、寝つきの悪さや浅い眠りに悩まされることがあります。夜中に何度も目が覚めたり、逆に疲れすぎて眠りが異常に深く起きられないこともあるでしょう。睡眠の質が悪いと日中の集中力低下やミスの増加にもつながります。
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体調を崩しやすい: 疲労や睡眠不足で 免疫力 が低下すると、風邪や感染症にかかりやすくなります。保育園は子どもを通じて感染症が広がりやすい環境ですから、体が弱っているとすぐにもらってしまい、発熱や胃腸炎でダウン…なんてことも増えてしまいます。
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身体のあちこちに不調: 慢性的な肩こり・腰痛は保育士によくある症状です。常に子どもを抱っこしたり中腰で世話をしたりと負担がかかるうえ、疲労が溜まることで筋肉のコリや痛みが抜けにくくなります。またストレスから緊張が続くと、頭痛や胃の不調、肌荒れやニキビなど身体に様々なサインが現れます。
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メンタル面の疲れ: 体調不良が続くと気分も落ち込み「仕事に行きたくない…」と感じたり、子どもや同僚に対して余裕がなくイライラしやすくなることもあります。やる気や集中力の低下は、自分でも気づかぬうちにサインとして出ているかもしれません。
こうしたサインに心当たりがある場合、決して「自分の頑張りが足りないせい」などと責めないでください。誰でも疲れが溜まれば心身に不調が出るのは当然のことです。
大事なのは、早めに気づいて対策すること。不調を見過ごして働き続けると、子ども達のお世話にも支障が出たり、最悪の場合「もう保育士を続けられない…」と燃え尽きてしまう恐れもあります。
次章から、具体的な体調管理のポイントをチェックしていきましょう。
保育士が行うべき具体的な体調管理方法
忙しい保育士さんでも今日から実践できる、基本的な健康管理のポイントを紹介します。
どれもシンプルなことですが、日々意識するかしないかで体調は大きく変わります。
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十分な睡眠を確保する: 体調管理の基本はやはり睡眠です。一般に働く世代は最低6時間以上の睡眠が必要とも言われます。シフトで就寝時間が不規則になりがちな場合も、自分なりの工夫で睡眠時間と質を確保しましょう。例えば「夜更かしせず早めに布団に入る」「短時間でも毎日同じ時間帯に寝起きする習慣をつける」などリズムを整えることが大切です。早番前日は少しでも早く寝る、遅番明けで翌日休みなら寝だめしすぎず朝日を浴びて起きる、といった調整を意識しましょう。日中に眠気が強いときは、休憩中に15~20分程度の仮眠(パワーナップ)を取るのも効果的です。ただし長すぎる昼寝は夜の睡眠に悪影響を与えるため注意してください。睡眠の質を上げるため、寝る前にスマホを見すぎない・リラックスできる音楽を流す、部屋を暗く静かにするなど環境を整える工夫もしてみましょう。
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バランスの良い食事をとる: 「忙しくて食事は二の次」になっていませんか?偏った食生活は疲労や体調不良の元です。主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い食事を1日2回以上はとることが推奨されています。例えば朝はご飯と卵や納豆、野菜のお味噌汁を摂るなど、簡単でもいいので栄養のあるものを口に入れましょう。朝食が無理でも、牛乳やバナナだけでもエネルギー補給になります。昼食も菓子パンやお菓子で済ませず、タンパク質や野菜をできるだけ摂るよう意識してください。どうしてもコンビニに頼るときは、おにぎりとサラダチキン、サラダやスープなど組み合わせれば栄養バランスが改善します。さらに水分補給も重要です。声を出す機会が多い保育士にとって喉のケアは欠かせませんし、脱水状態になると疲れやすくなります。こまめに水や麦茶などを飲み、のどが渇く前に潤す習慣をつけましょう(特に夏場や動き回った後は要注意)。ビタミンやミネラルも不足しないよう、果物やヨーグルトなど間食で補給するのもおすすめです。忙しいからこそ「食べるもので自分の体をいたわる」意識を持ってみてください。
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適度に体を動かす: 疲れているときほど「休みたい…」と思いがちですが、実は軽い運動やストレッチは疲労回復に効果的です。体を動かすことで血行が良くなり、凝り固まった筋肉の疲れが取れやすくなります。激しい運動をする必要はありません。勤務前後や休憩中に肩や首を回す、腰を伸ばすストレッチをするだけでもリフレッシュ効果があります。また休みの日に少し散歩をしたり、ヨガや軽い筋トレを習慣にするのも良いでしょう。適度な運動は睡眠の質向上やストレス発散にもつながり、 疲れにくい体づくり に役立ちます。自宅で動画を見ながら数分体を動かすだけでもOKなので、「疲れをためない体」を意識して動いてみてください。
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休養とリラックスも忘れずに: 真面目な保育士さんほど、休みの日にも仕事のことを考えてしまったり、家の用事で終わってしまう…ということがあるかもしれません。しかし心身のリカバリーには積極的な休養が必要です。お休みの日は思いきり趣味を楽しんだり、好きな音楽を聴きながらゆっくりお風呂に浸かるなど、「自分を甘やかす時間」を作りましょう。仕事のことは一旦忘れてリフレッシュすることが、結果的に良い仕事につながります。また、疲れを感じたら早めに布団に入ってたっぷり睡眠を取る、マッサージや整体で体をケアするといった休養も大切です。ストレスを溜めない工夫として、自分なりの発散法(好きな本や映画を見る、友達とおしゃべりする、軽く汗をかくなど)を見つけておくのも良いですね。心がリラックスすると体調も安定し、疲労感の軽減につながります。
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健康管理の基本習慣を徹底する: 日頃からの小さな心がけも侮れません。手洗い・うがいを忘れずに行い、子どものオムツ替えや食事介助の後は必ず手を洗うなど感染予防を徹底しましょう。インフルエンザなど予防接種で防げる病気はワクチン接種も検討してください。体調が悪いと感じたら市販薬に頼るだけでなく早めに受診することも重要です。プロとして子ども達の健康を預かる以上、まずは自分自身が万全でいられるよう基本的な健康習慣を守りましょう。
現場での相談・制度活用・休憩確保の工夫
保育園の現場は常に子ども優先で、自分のことは後回し…という雰囲気があるかもしれません。しかし 体調が優れないときには周囲に相談し、制度を活用すること は決して甘えではなくプロとして当然の判断です。ここでは職場でできる工夫について考えてみましょう。
まず、どうしても体調が悪い日は 無理せず休む勇気 を持ってください。発熱やひどい疲労がある状態で出勤すると、自分の症状が悪化するだけでなく、子ども達に病気をうつしてしまうリスクもあります。また、朦朧とした状態では適切な保育ができず安全管理にも支障が出かねません。
責任感の強い保育士さんほど「休んだら職場に迷惑が…」と我慢しがちですが、長い目で見れば休むときは休む方が周囲のためにもなるのです。
つらいときは早めに園長やリーダーに連絡し、状況を説明してお休みをいただきましょう。
幸い最近では保育士の体調不良時には代替の人員を手配するなど、職場全体でフォローしようという動きも広がっています。「お互い様」の精神で、自分が元気なときは助け、しんどいときは助けてもらうという環境づくりが理想ですね。
また、日頃から同僚や上司と 相談しやすい関係を築いておくこと も大切です。
例えば「最近少し疲れが溜まっている」と感じたら、信頼できる同僚に打ち明けてみましょう。同じ現場で働く仲間だからこそ分かち合える悩みもありますし、先輩からアドバイスをもらえるかもしれません。園の規模によっては産業医や健康相談窓口が設けられているところもありますので、利用できる制度があれば積極的に活用しましょう。メンタル面の悩みも含め、決して一人で抱え込まないことが重要です。
勤務中の休憩をしっかり確保する工夫 も忘れてはいけません。保育中は常に気が抜けず、トイレに行く時間もない…という声も聞きますが、長時間休みなく働き続けるのは集中力も落ち事故の元です。法律上も6時間超の労働で45分以上の休憩取得が義務付けられています。園によっては人手不足で難しい場合もありますが、同僚同士で交代で休憩に入るなどの工夫をしましょう。
子どもがお昼寝している時間 は絶好の休憩チャンスです。
その間に書類仕事を片付けたい気持ちも分かりますが、自分も少し椅子に座って一息ついたり、水分補給をするようにしてください。可能であれば静かに目を閉じて体を休めたり、軽くストレッチするだけでも疲労回復につながります。休憩が取りにくい職場では、上司に相談して勤務体制の見直しを提案してみるのも一つの手です。有給休暇 も積極的に使いましょう。「人手が足りず有給が取りにくい…」という園も多いですが、権利であるお休みを取得することは悪いことではありません。計画的に有給を取得して連休を作り、その間に旅行や趣味でリフレッシュするのもおすすめです。
それでも「根本的に休みが取れない職場」「常に人手不足で心身が限界…」という場合は、思い切って働き方を見直すことも視野に入れてください。
保育士の資格を活かせる職場は保育園だけではなく、企業内保育や学童保育、ベビーシッターなど様々な選択肢があります。あなたの体調や生活スタイルに合った環境に移ることで、健康を損なうことなく長く働き続けられるケースもあります。
「転職」は最後の手段かもしれませんが、自分の人生と健康を守るための選択肢として頭の片隅に置いておいても良いでしょう。
妊娠準備・女性特有の健康課題(貧血など)
現役保育士さんの中には、これから妊娠・出産を考えている方や、女性ならではの体調管理に悩んでいる方もいるでしょう。シフト勤務で忙しく働いていると、自分の将来の体のことまでなかなか気が回らないかもしれません。しかし 妊娠を見据えた健康管理や、女性特有の不調への対策 も早めに意識しておくことが大切です。
まず妊娠を希望する場合、 体調を整えておくことが何より重要 です。
忙しさやストレスで生理不順になっていたり、極度の疲労でホルモンバランスが乱れていると、いざ妊活を始めても思うようにいかない可能性があります。シフト制で難しいとは思いますが、なるべく生活リズムを安定させ、栄養と休養を十分に取るよう心がけましょう。
妊娠前から適度な運動習慣をつけておくと、妊娠中の体力維持や産後の回復にも役立ちます。
職場への相談や制度の活用 もポイントです。日本の法律では妊娠中の女性労働者を守る制度が整っています。たとえば妊娠が分かったら早めに職場に報告し、産休・育休の取得予定を相談しましょう。妊娠初期から 母性健康管理措置 といって、医師の指導のもと勤務時間の短縮や勤務内容の変更を申し出ることも可能です。
保育士の場合、お腹が大きくなってきたら重たい園児を抱っこする業務を代わってもらったり、つわりがひどい時期はこまめに休憩を挟めるよう配慮してもらうなどの対応が考えられます。職場によっては妊娠中の職員に特別休暇や時差勤務制度を設けているところもありますので、上司や人事担当者に確認してみてください。
女性特有の健康課題 として代表的なのが 貧血 です。鉄分や葉酸など血を作る栄養が不足すると起こる鉄欠乏性貧血は、20〜30代の女性に多い不調の一つ。貧血になると疲れやすくなり、少し動いただけで息切れしたり、酷いと立ちくらみや頭痛、動悸などの症状も現れます。毎年の健康診断で貧血気味と言われた経験がある方もいるかもしれません。保育士は忙しさで食事が簡単になりがちなうえ、生理による定期的な出血もあるため、意識しないと鉄分不足に陥りやすい職業と言えます。
貧血予防・改善 のためには、レバーや赤身の肉、魚、大豆製品、ほうれん草など鉄分豊富な食品を積極的に摂ることが大切です。ビタミンCは鉄の吸収を助けるので、野菜や果物も一緒に摂るようにしましょう。それでも慢性的に数値が低い場合は、医師に相談して鉄剤やサプリメントで補うことも検討してください。
貧血を放置すると全身の疲労感が増し、将来妊娠した際にも母体や赤ちゃんに負担をかける恐れがあります。葉酸サプリおすすめなども活用しつつ、必要な対策を取るようにしましょう。
女性の場合、他にも月経痛やPMS(月経前症候群)、更年期に向けた体調変化などライフステージごとの健康課題があります。月経痛が重い人は婦人科で相談すれば薬で軽減できる場合がありますし、PMSによる不調もサプリメントや生活習慣で和らぐケースがあります。
「生理だからしんどいのは当たり前」と無理せず、必要に応じて専門医に頼ることも大切です。自分の体を大事にすることは、良い保育を提供する土台にもなります。将来を見据えて、長いスパンで健康管理を考えていきましょう。
まとめ
保育士のシフト制勤務による疲労と体調管理について、様々な角度からお話ししました。
不規則な生活リズムやハードな業務で心身に負担がかかりやすいからこそ、普段から睡眠・食事・運動・休養のバランスを整え、自分の体を労わることが大切です。
職場の仲間と支え合いながら無理をしない働き方を心がけ、必要なときには制度に頼ることも遠慮はいりません。
女性としての健康課題にも目を向け、将来のためのケアや準備を進めていきましょう。健康で元気に働き続けることが、何より子ども達の笑顔につながります。あなた自身が笑顔でいられるよう、ぜひ今日からできることから体調管理を始めてみてください。
毎日の小さな積み重ねが、疲れに負けない丈夫な心と体を作ってくれるはずです。お疲れ様の自分に、ご褒美といたわりを忘れずに!